論理的思考力を鍛えるには?知能検査の「行列推理」と例題4問
公開: 2026-07-17|最終更新: 2026-08-26|IQテスト.jp編集部
論理的思考力は、ビジネスの場面で「ロジカルシンキング」として語られることの多い力ですが、知能検査の世界では、行列推理をはじめとする推理課題で古くから測定されてきました。
この記事では、論理的思考力とは何か、知能検査で使われる行列推理という形式の仕組み、三段論法などの言語的推理を、オリジナルの例題つきで解説します。例題はすべて当サイトが独自に作成したものです。
論理的思考力とは
論理的思考力とは、与えられた情報から規則や関係性を見つけ、筋道を立てて正しい結論を導く力のことです。「AならばB、BならばC、よってAならばC」のように、飛躍なく段階を踏んで考える力と言い換えることもできます。
知能検査では、知識の量に左右されにくい図形パターンの課題や、言葉の関係を問う課題を通じて、この力を測ろうとします。
演繹と帰納という2つの向き
論理的な推論には大きく2つの向きがあります。決まった前提から確実な結論を導くのが演繹、個別の事例から一般的な規則を推測するのが帰納です。
行列推理は、並んでいる図形から規則を推測する点で帰納寄りの課題です。一方、三段論法のように前提から結論を導く課題は演繹にあたります。知能検査は両方を扱います。
行列推理とは。知能検査の代表的な形式
行列推理とは、3×3などのマス目(行列)に一定の規則で図形が並んでおり、空欄に入る図形を選択肢から選ぶ形式の課題です。行ごと・列ごとに「形が変わる」「数が増える」「向きが回転する」といった規則が仕込まれており、それを見抜けるかどうかが問われます。
言葉や知識をほとんど使わないため、言語や文化圏の影響を受けにくい課題形式とされ、多くの知能検査で中心的な役割を担っています。
| 規則の型 | 内容 |
|---|---|
| 数量の変化 | 右へ進むごとに個数が増える・減る |
| 回転 | 一定の角度ずつ図形が回る |
| 種類の対応 | 行ごと・列ごとに図形の種類が決まっている |
| 重ね合わせ | 左と中央を重ねた結果が右になる |
| 位置の移動 | 図形がマスの中を一定方向に動く |
例題で体験。行列推理3問(オリジナル)
行列推理の感覚をつかむために、文章で表せる例題を3問用意しました。頭の中にマス目を思い浮かべながら解いてみてください。
例題1(基礎)
3×3のマス目に図形が並んでいます。1行目は左から「丸が1個」「丸が2個」「丸が3個」。2行目は左から「四角が1個」「四角が2個」「四角が3個」。3行目は左から「三角が1個」「三角が2個」と並び、右下のマスだけが空欄です。空欄に入る図形は何でしょうか。
答えは「三角が3個」です。この問題には、行ごとに図形の種類が決まっている(丸・四角・三角)、左から右へ数が1個ずつ増える、という2つの規則があります。両方を右下のマスに当てはめると、三角が3個になります。
例題2(応用・回転)
各マスには矢印が1本描かれています。1行目は左から「上向き」「右向き」「下向き」。2行目は左から「右向き」「下向き」「左向き」。3行目は左から「下向き」「左向き」と並び、右下が空欄です。空欄に入る矢印の向きはどれでしょうか。
答えは「上向き」です。どの行も、左から右へ進むごとに矢印が時計回りに90度ずつ回転しています。3行目は「下向き」「左向き」と来ているので、左向きからさらに90度回した上向きが入ります。縦の列で見ても同じ回転の規則が成り立っていることを確認できると、より確実です。
例題3(応用・重ね合わせ)
1行目は左から「縦線1本」「横線1本」「十字」。2行目は左から「左上がりの斜線」「右上がりの斜線」「×印」。3行目は左から「縦線1本」「右上がりの斜線」と並び、右下が空欄です。空欄に入る図形はどれでしょうか。
答えは「縦線と右上がりの斜線を重ねた図形」です。この問題の規則は、左のマスと中央のマスを重ね合わせたものが右のマスになる、というものです。1行目では縦線と横線が重なって十字に、2行目では2本の斜線が重なって×印になっています。
重ね合わせの規則は、1つのマスだけを見ていても気づけません。行全体の関係を見る癖がついているかが問われる形です。
言語で考える推理。三段論法
図形だけでなく、言葉を使った推理も論理的思考力の重要な側面です。代表的なのが三段論法で、「すべてのAはBである」「CはAである」という2つの前提から、「CはBである」という結論を導く形式です。
例題4(三段論法)
「この図書館の司書は、全員が読書家です」「Dさんは読書家です」。この2つの前提から、「Dさんはこの図書館の司書である」と結論できるでしょうか。
答えは「結論できない」です。前提が保証しているのは「司書ならば読書家」という向きだけで、逆の「読書家ならば司書」は保証されていません。読書家には司書以外の人も大勢いる可能性があるからです。このように条件の向きを逆にしてしまう誤りは、日常の議論でも頻繁に起こります。
よくある論理の誤りを見分ける
「AならばB」という命題からは、何が言えて何が言えないのかを整理しておくと、例題4のような引っかけを避けられます。
| 形 | 内容 | 元の命題から言えるか |
|---|---|---|
| 逆 | BならばA | 言えない |
| 裏 | AでないならBでない | 言えない |
| 対偶 | BでないならAでない | 言える |
日常の会話でも起こる取り違え
「よく勉強する人は成績が良い」という話から「成績が良い人はよく勉強している」と受け取ってしまうのが、逆の取り違えです。前者が正しくても後者が正しいとは限りません。
確実に言えるのは対偶だけです。「成績が良くない人は、よく勉強しているとは言えない」という形なら、元の主張と同じ内容を指しています。
論理的思考力の鍛え方
論理的思考力を伸ばす特効薬はありませんが、日常に取り入れやすい方法として次のようなものが挙げられます。
- パズルやナンプレ、行列推理形式の問題に取り組む
- 文章を読むとき「根拠」と「結論」がどれかを意識して分解する
- 「逆も本当に成り立つか?」と条件の向きを確かめる癖をつける
- 結論を出す前に、別の説明が成り立たないかを一度考えてみる
- 図形の課題では、1マスずつではなく行・列の全体を見る
条件整理の問題も論理的思考力の一部
知能検査や適性検査では、複数の条件から答えを絞り込む形式の問題も出されます。表を作って整理できるかどうかが問われる形です。
例題5(条件整理)
A・B・Cの3人が、赤・青・白のいずれか1色ずつ異なる帽子をかぶっています。次の2つがわかっています。「Aは赤ではない」「Bは白でも青でもない」。それぞれの帽子の色はどれでしょうか。
答えは、Aが青、Bが赤、Cが白です。2つ目の条件から、Bは白でも青でもないので赤に確定します。すると1つ目の条件と合わせて、Aは赤でもなく(Bが赤なので)残るのは青か白ですが、Bが赤を取っているためAは青か白。ここでCが残りを取ることになり、Aが青、Cが白と決まります。
この形式のコツは、確定する条件から先に処理することです。「Bは赤」のように1つに絞れる条件を見つけたら、そこを起点に他を埋めていきます。
ビジネスの「ロジカルシンキング」との違い
論理的思考力という言葉は、ビジネスの文脈でも使われます。ただし、知能検査が測ろうとしているものとは重なりつつもずれがあります。
ビジネスで求められるのは、複雑な状況から論点を切り出し、根拠を揃えて人に伝える力です。前提が不完全な中で判断する場面が多く、正解が一つに決まりません。
一方、知能検査の推理課題は、必要な情報がすべて与えられていて、正解が一つに決まる形で作られています。前提を疑う必要はありません。
| 項目 | 知能検査の推理課題 | ビジネスの論理的思考 |
|---|---|---|
| 前提 | すべて与えられる | 自分で集め、疑う必要がある |
| 正解 | 1つに決まる | 複数あり得る |
| 求められること | 規則を見抜く速さ | 論点の切り出しと伝達 |
| 訓練の方法 | 形式に慣れる | 実務の中で反復する |
推理課題が苦手だと感じるときは
行列推理のような問題で手が止まると、自分は論理的でないと感じてしまうかもしれません。しかし、こうした課題の得意・不得意は、思考の丁寧さとは別のものです。
規則を見抜く作業は、ひらめきに近い側面があります。時間をかけて考えても見えないものが、視点を変えた瞬間に見えることがあります。逆に、じっくり検証する力に長けた人が、速さを競う課題では実力を出しにくいこともあります。
テストのスコアが低かったとしても、それは「この形式の課題を制限時間内に処理する速さ」の話であって、筋道を立てて考える力そのものの評価ではありません。
規則が見えないときに試すこと
推理課題で手が止まるのは、多くの場合「見る単位が合っていない」ことが原因です。1マスずつ、1つの要素ずつ見ていると、全体にかかる規則には気づけません。
行列の問題なら、まず行全体を左から右へ眺めて何が変わっているかを言葉にします。「増えている」「回っている」「重なっている」。言葉にできれば、それが規則の候補です。
変化が複数ある場合もあります。形が変わりながら数も増えている、というように2つの規則が同時に働いていることは珍しくありません。1つ見つけて満足せず、他の変化も確認してください。
それでも見えないときは、選択肢から逆算します。ある選択肢を空欄に入れたとき、行と列の両方で規則が成立するかを確かめる方法です。前から解くより速いことがあります。
- 1マスずつではなく、行・列の全体を見る
- 変化を言葉にしてみる(増える・回る・重なる)
- 規則が1つとは限らない。他の変化も確認する
- 行き詰まったら選択肢から逆算する
日常の判断に持ち込めること
行列推理そのものが日常で役立つ場面はほとんどありません。ただし、そこで使う考え方の一部は、日常の判断にも持ち込めます。
1つは、条件の向きを確かめる習慣です。「AならばB」と「BならばA」は別物だという区別を持っているだけで、日常の議論での取り違えをかなり避けられます。
もう1つは、結論を出す前に別の説明が成り立たないかを考えることです。1つの説明が思いついたとき、それが唯一の説明かどうかは別問題です。他の可能性を1つ探してみるだけで、早合点は減ります。
どちらも生まれつきの能力ではなく、意識すれば身につく手順です。推理課題が苦手でも、この2つは実行できます。
行列推理形式の問題を解いてみる
当サイトの論理テストは、行列推理の形式で本格的に腕試しをする用途に向いています。今回紹介した図形パターンの規則発見に加えて、三段論法などの言語推理・条件整理も含む10問・約8分の構成である点に強みがあり、問題はすべて当サイトのオリジナル、結果の閲覧まで無料です。
例題で感覚をつかんだら、ぜひ本編で挑戦してみてください。
- 向いている人: 例題を解いて手応えを感じた人、図形と言語の両方を試したい人
- 向いていない人: 実在の知能検査そのものの問題を練習したい人(本サイトの問題はすべてオリジナルです)
よくある質問
行列推理はなぜ知能検査でよく使われるのですか?
言葉や知識にほとんど頼らずに推理力を測れるため、言語や文化圏の違いに影響されにくい課題形式だからです。
論理的思考力は生まれつきで決まりますか?
推理課題の得意・不得意には個人差がありますが、条件を整理する、根拠を確かめるといった思考の手順は、練習で身につけられる技術でもあります。
「AならばB」から「BならばA」は言えますか?
言えません。これは「逆」と呼ばれる形で、元の命題からは保証されません。元の命題から確実に言えるのは対偶(BでないならAでない)だけです。
この記事の例題は実際の知能検査の問題ですか?
いいえ。例題はすべて当サイトが独自に作成したオリジナルです。実在の知能検査の問題の転載や模倣はしていません。
